受動態

受動態とは

日本語でもあるように受動態とは「…される、されている」という表現のことで、受身や被害を表します。
教科書や文法書にはよく、

I kicked the ball.
(私はボールを蹴った。)

The ball was kicked by me.
(そのボールは私に蹴られた。)

のように、動詞の対象となる語(目的語)を主語に持ってくる際に、動詞をの形に置き換えることで受動態にすることができると書かれています。

確かにその通りなのですが、実際に後者のように話す人はいないでしょう。

実際の会話で受動態が好まれる条件やニュアンス、コアイメージを押さえておくと、ネイティブスピーカーが言わないような不自然な文章を避けることができます。

第一に重要な点は、目的語がない文章は受動態に置き換えることができないということです。

全ての文章を受動態に書き換えられるというわけではありません。
〇My son felt sick in the car.
×Sick was felt by my son in the car.

様々な受動態

これまでの記事で助動詞や過去形、完了形、進行形などを紹介してきました。

それぞれを助動詞と組み合わせて文章を作成することも可能です。

その際受動態の基本形であるやこれまでに学んだ文法ルールが崩れることはありません。

また、重要な情報ではなかったり、よくわからなかったりする場合は、能動態では主語であったは省略されます。

多くの場合、省略しても文脈から相手に伝わるため省略されることが多いです。

They saw a lot of birds taking off from the lake.
(彼らは湖から多くの鳥が飛び立つのを目撃した。)

A lot of birds taking off from the lake were seen (by them).
(多くの鳥が湖から飛び立つのを目撃された。)

Kevin will look after the dog for a couple of weeks.
(ケビンは何週間か犬の面倒を見る。)

The dog will be looked after (by Kevin) for a couple of weeks.
(犬はケビンによって何週間か面倒を見てもらう。)

My mother has told me several times to finish my homework before dinner.
(母は夕食の前に宿題を終わらせるよう何度も言った。)

I have been told (by my mother) several times to finish my homework before dinner.
(私は母から何度も宿題を夕食の前に終わらせるよう言われた。)

What were they talking about for an hour in such a tiny room?
(あいつ等、あんな小さな部屋で1時間も何を話していたんだ?)

What was being talked about for an hour in such a tiny room?
(あんな小さな部屋で一時間も何が話されていたんだ?)

I like people asking me questions when they don’t understand my instructions.
(私の指示に関して、わからないことをちゃんと聞いてくる人が好きです。)

I like being asked questions when people don’t understand my instructions.
(私の指示が伝わらなかった時、ちゃんと確認されることが好きです。)

受動態と複数の目的語

目的語がない文は受動態にすることはできません。

それでは、以下のように目的語が複数ある場合はどうなるのでしょうか。

①The man gave his daughter some money.
(男性は自分の娘にお金をあげた。)

教科書や文法書には、この文章はSVOOの形を取るgive型・第四文型と細かく分類されていますが、大切な点は細かな分類ではなく目的語が二つある点です。

与えた”gave”という動作の対象(目的語)が二つあるため、受動態にすると以下の2パターンが生じてしまいます。

②His daughter was given some money.

③Some money was given to his daughter. ③

大抵の場合、人が主語に来る②の文の方が好まれますが、仮に話者が「出所のわからないお金を女の子がもらったんだ」と強調して伝えたい場合は③の形でも不自然ではありません。

いずれの文脈でも、①の言い回しで不自然に聞こえるということはありませんし、大半のネイティブスピーカーは①を好むでしょう。

受動態の持つニュアンス

受動態の使い方を紹介している際に述べるのも憚られますが、日常会話において受動態はあまり多用されません。

持って回ったような言い回しに聞こえるだけでなく、主語をあえて曖昧にする際にも用いられるためです。

すると責任のありかをぼかしているように聞こえてしまうため、自身のミスを謝罪する際⑤の言い回しは好まれません。

④I made a big mistake. My apologies.
(大きなミスをしてしまいました。大変申し訳ございません。)

⑤A big mistake was made. I apologize for the inconvenience.
(大きなミスが起こりました。ご不便おかけし申し訳ございません。)

逆に、動作主が不明、ないしは個人に限定する必要のないような文章。

例えば、ニュースや契約書、論文等の科学的な文書は受動態が好まれます。

The island was discovered about 200 years ago.
(その島は200年程前に発見された。)

The broken car was found on the mountain and the authorities noted that the burglar abandoned it.
(壊れた車が山中で見つかり、当局は強盗犯が乗り捨てていったと述べました。)

また、受動態に書き換えることでニュアンスが変化することもあります。

⑥I can’t solve this math question.
(私はこの数学の問題を解けない。)

⑦This math question can’t be solved.
(この数学の問題を解くことはできない。)

⑥は単に自分が解けないと述べているのに対し、⑦はまるで誰も解けないと述べているように聞こえます。

文脈にもよりますが、受動態にして主語を曖昧にすることで、まるで一般論を述べているかのように聞こえるのです。

受動態を用いた慣用表現

主語を人ではなく物にすることで、その物を主語としてより強調することができたり、あえて動作主を曖昧にすることができたりするというのが受動態の持つコアイメージです。

勿論それだけではなく、慣用的に用いられる表現も多々存在します。

以下にいくつか例文を紹介するので声に出して読んでみましょう。

感情表現

I was excited to go to Disney Land yesterday so I couldn’t sleep at all.
(ディズニーランド行くから、昨日は興奮しちゃって眠れなかったよ。)

Kate was surprised with her sudden order to transfer.
(ケイトは突然の転勤辞令に驚いた。)

誕生と死

My son was born in 2000.
(息子は2000年に生まれた。)

My great-grandfather Ken was killed in World War I.
(曾祖父のケンは第一次世界大戦で亡くなった。)
※また、”be動詞”の代わりに”get”を用いて受動態を表現することも可能です。
しかし、カジュアルな言い方であるため書き言葉では用いられません。

I got paid today. Let’s go drink!
(今日給料入ったし、飲みに行こう!)

Koji got fired yesterday…do you know why?
(コウジは昨日クビになったぞ…何でか知ってる?)

受動態の書き換え表現

前回は受動態の使い方やニュアンス、慣用表現等を紹介しました。

今回はもう少し掘り下げて異なる表現を紹介します。

前回説明したように、受動態を用いたこれらの言い回しは堅く持って回った言い回しにも聞こえます。

日常会話ではあまり多用されず、ニュースや書き言葉等で好まれる表現であることを念頭に置いておきましょう。

①Many people say that the new movie that launched last week is amazing.
(多くの人々が、先週から始まった新作映画は素晴らしいと言っている。)

②The new movie that launched last week is said to be amazing.

③It is said that the new movie that launched last week is amazing.

①の言い回しが最も自然で、日常会話で用いられる表現です。

この文章を受動態にする際、これまでのルールに則って考えると目的語が主語に来る、つまり”The new movie that launched last week”が主語に来ると考えるでしょう。

すると②のように主語が長くなり、文の構造が大きく変わってしまいました。

また、”is said”と”is amazing”をといった動詞を連続で用いることができないため、to不定詞(詳細は以降のUnitで紹介します。)を用いて表現することになりました。

②の言い回しは文法的に正しいのですが、①や③と比べあまり使われる表現ではありません。

そもそも英語話者は自然と主語が短い文章を好むためです。

単純に言いやすく、相手にとってもわかりやすいためでしょう。

日本語では主語を省略して話すことが多いですよね。文法的には正しいはずなのに、むしろ主語があると不自然に感じることさえままあります。

単純に我々日本語話者に取って言いやすく、また言わなくても文脈で伝わるだろうという感覚があるためでしょう。

英語にも文法的に合っているのに不自然に聞こえる表現とそうでない表現は当然存在します。

そのため、実際には②の言い回しよりも③の言い回しが好まれることが多いです。

特にIt”自体に意味があるわけではありませんが、主語を長くしないよう簡潔にするために”It”が用いられています。

このような”It”は形式主語呼ばれています。

繰り返しになりますが、受動態になると堅い言い回しになるため話し言葉では比較的好まれないという点には注意しましょう。

勿論、人によっては使いますし、文章では目にする機会も時々あるかと思いますのでいくつか紹介します。

このような構造を取れる動詞は限られていますので、例文と共に以下の動詞を覚えてしまいましょう。

It is said that Kevin quit his job and moved back to his hometown.
(ケビンは仕事を辞めて故郷に戻ったみたいですよ。)

↔Kevin is said to have quit his job and moved back to his hometown.

It is alleged that Kevin embezzled the company’s money, but he denied it.
(ケビンは会社のお金を使い込んだと言われているけど、本人は否定しているそうです。)

↔Kevin is said to have embezzled the company’s money, but he denied it.

Did you watch the new Daniel Craig movie? It is believed that the movie is one of the greatest movies in his career.
(ダニエル・クレイグの出てる新作映画見ました? 彼のキャリアの中でも最高傑作の一つだと言われてますよ。)

↔Did you watch the new Daniel Craig movie? The movie is believed to be one of the greatest in his career.

It was expected that the company president would make a speech at the ceremony.
(式典で社長がスピーチをするだろうと思われていた。)

↔The company president was expected to make a speech at the ceremony.

It is well known that many rich people live in that area.
(多くの裕福な人々がその地域に住んでいることはよく知られている。)

↔Many rich people are known to live in that area.

It was reported that sales for ethanol rose by over 40% this year because of COVID-19.
(新型コロナウィルスのため、今年はエタノールの売り上げが40%上昇したと報道された。)

↔The sales for ethanol were reported to rise by over 40% this year because of COVID-19.

It was thought that the famous actor was murdered but there is no evidence at this stage.
(その有名な俳優は殺害されたと考えられていたが、現段階で証拠は何もない。)

↔The famous actor was thought to be murdered but there is no evidence at this stage.

be supposed to do

「…することになっている」という意味の”be supposed to do”は複数のニュアンスを持つため、非英語話者からすると感覚的に理解することは難しいかと思います。

そこで、まず覚えるべきはコアイメージ、「定められた未来」です。

④I am supposed to go to my friend’s house after school.
(学校終わったら友達の家に行くんだ。)

⑤I was supposed to study for test but somehow, I cleaned my room instead.
(テスト勉強するはずだったのに、どういうわけか部屋の掃除をしてしまった。)

⑥You are not supposed to enter this room without a face mask.
(この部屋にマスク無しで来るべきではない。)

④の文は、事前に約束していて行かなくてはいけないと話者が認識しているような言い回しです。行きたいと話者が思っているかどうかは、この表現からは読み取れません。

⑤の文は、事前にやると決めていた、もしくはやらなくてはならなかったことをできなかったという内容です。

”was/were supposed to do”と過去形になると「…することになっていたがしなかった」とネガティブなニュアンスで用いられます。

⑥の文は、ルールや決まり事、法律など誰もが認識しているルールを相手に伝えています。

“be supposed to do”は、将来的な予定や期待、ルールや常識等を一つの言い回しで表せてしまうため使いこなすには練習が必要でしょう。

コアイメージを押さえながら、様々な例文に触れて練習してみましょう。

まとめ

  • 「…される、されている」という意味の受動態は“be動詞 + 過去分詞”の形で表すことができる。
  • 受動態にすることで元の文の主語は省略されることがあり、その際主語は特定されず曖昧になる。
  • 受動態にすることで元の文の目的語が主語となり、目的語を強調して述べることができる。
  • 受動態は堅く、持って回ったような言い方になってしまいがちであるため口語では多用されない。
  • 主語が長い文章よりも形式主語”it”を使った言い回しが好まれる。
  • “be supposed to do”のコアイメージは「定められた未来」。